2013年01月08日

三上延『ビブリア古書堂の事件手帖3 〜栞子さんと消えない絆〜』

biburia3ドラマ化も目前でますます大人気、ビブリア古書堂シリーズの第3巻。1・2巻と読んできた身としては、シリーズが続く限り読み続けることになりそうだが、この第3巻は青春18きっぷで移動中に一気に読んでしまった。

一言で感想を言えば、「筆が乗ってきた!」という感じ。ただのいち読者なのになんとも偉そうで恐縮だが、まさに、シリーズが軌道に乗ってきた、そんな好印象を得た一冊だった。

ラノベに近いといわれる所以であろう、各登場人物の濃いキャラクターは、より一層輪郭をハッキリさせてきた。特に、シリーズ冒頭では安楽椅子探偵の趣が強かったヒロイン・栞子さんは、いろんな場所に自ら足を運ぶことで、「本のことになるとすごい食いつくけど基本は人見知り」という”萌える”キャラクター性を更に魅力的に見せてくれる。本書から新たに登場する重要そうな新キャラクターたちも、非常にはっきりとしたキャラ付けがなされていて分かりやすい。

その新キャラ、本作では何人か登場するのだが、必要以上に増やさないようにする姿勢も良いと思う。本書での、本にまつわる謎を解いてほしいという依頼人は、これまでに登場したキャラクターその人だったり、メインのキャラクターにゆかりの深い人物だったり。依頼人をただどんどん増やしていくということもできるはずだが、そうはせず、工夫してメインの筋に沿う形でキャラクターを育てているのだ。

メインの筋、と言ったが、本作のメインの筋と言えばなんといっても、ヒロイン・栞子さんとその母親の物語。このメイン筋は本書でかなりの進展を迎えるが、このメイン筋とサブストーリーとのバランスみたいなものも非常に上手いなと思っていて、サブキャラのエピソードが完結するのに沿って実は栞子さんの母親に対する心境にも変化が出ていたりと、なかなか巧みにメイン筋が進んでいたりする。

取り上げる古書も、マニアックなものだけでなく『春と修羅』とかメジャーどころもちゃんと持って来たりしてるあたりも、なんだか余裕が感じられる。…こうした、一連の「こなれた感じ」を見て取ったため、冒頭の「筆が乗ってきた!」という偉そうな感想になったと、こういうわけで。

あと、特筆しておかねばならないのが、ついに自分が住んでいるあたりの地域の描写が登場したこと。もともとこのシリーズは北鎌倉や大船といった個人的になじみの深い地域を舞台にしている点でも好きだったのだが、本書ではJR根岸線の港南台、本郷台の両駅が登場したので仰天した。まさにそのあたりが僕が住んでる地域だからだ。これはなにを差し置いてもとにかく嬉しい要素。特に港南台は主要なキャラクターの店があるという設定なので、今後も頻繁に登場する可能性がある。あと、これまた良く行く場所である辻堂の図書館の周辺というのも出てきたり、やっぱりジモッティとしては要チェックなシリーズなのだった。

というわけで、順調に4巻以降も続いていきそうな雰囲気で、こちらも付き合う気満々という感じなわけだが、気になるのはやっぱりテレビドラマの話題。主にキャスティングについて放送前から不満が噴出しているようだが(確かにキャスティングだけ見たら僕も絶対失敗だと思うのだけど(笑))、こればっかりは実際に見てみないとなんとも言えないので、とりあえず1回目は見てみようと思っている。感想もそのあとに書ければと。

nozan0524 at 21:02│Comments(0)TrackBack(0)  

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