kamaisi東日本大震災で釜石市の生徒が、日ごろの防災教育のおかげで「自分の頭で判断して」的確な行動を選択し見事に避難できたそうです。兵庫県にある防災を専門に学ぶ高校で授業にその事例が使われるということが神戸新聞の夕刊に出ていました。

(1)想定にとらわれない
(2)状況下で最善を尽くす
(3)まず自分の命を守り、他人を助ける率先避難者になる

という避難三原則を実践したということです。

これは、素晴らしいことです。この成功例は賞賛すべきことです。しかし、この事例を「想定」にしてはいけません。「防災三原則を守れば必ず避難できる」ことはありません。今回のように運が良ければ、という前提つきです。

たとえば、冬の嵐が来ている深夜に今回と同じ地震が発生していたらどうなっていたでしょうか。今回のようにうまくいったでしょうか。明治三陸津波は、冬の夜に発生しました。寒さのせいで迅速な非難に結び付かなかった例もあるようです(「三陸海岸大津波」吉村昭著)。

大船渡市綾里白浜では、明治三陸地震津波で38メートルの津波に襲われたため、地区住民のほとんどが高台に住み、今回の津波被害を免れたそうです。真冬の嵐の深夜でも、ここなら被害を防げます。真に賞賛され、皆が学ぶべきはこちらの事例です。防災三原則は、たまたま外出中に災害に襲われた時の鉄則と考えておくべきです。

安全な高台か、便利な海岸か 明暗分けた選択
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104230099.html
「谷底に住めば、毎日の漁は楽になる。でも80年間、誰も戻ろうと言い出さなかった」
”白浜集落と反対に、60年のチリ地震津波で50人が亡くなった大船渡港周辺の中心市街地は、被災地に街を再建。今回はここを中心に市内で約500人が死亡・安否不明になった。港近くで雑貨店を営んでいた男性(66)は「津波は覚えていたが、怖さを忘れていた。みんな便利な場所に住みたがった」と言う。”

安全を担保できるのは、「場所」だけです。防災三原則は素晴らしいのですが、あくまでも「次善の策」ということを肝に銘じておく必要があります。防災三原則を学んだから大丈夫だと過信すると、次の機会では死にます。